高血圧
血圧とは、血液が心臓から全身に送り出された時に血管の壁を押すときの圧力のことです。心臓が収縮することで発生します。そのため、高血圧など血圧の値は、血管の収縮程度やしなやかさ、心臓から送り出される血液量で決まります。
高血圧は収縮期血圧(上の血圧)が140mmHg以上の場合、または拡張期血圧(下の血圧)が90mmHg以上の場合、あるいはこれらの両方を満たす場合と定義されています。心臓が収縮して血液を送り出す時に太い血管にかかる圧力が収縮期血圧、俗にいう「上の血圧」です。逆に拡張期血圧(下の血圧)とは心臓が拡張して緩み、血液を太い血管に送り出していない状態の時の血圧です。
高血圧は国内で、もっとも患者数が多い病気で、現在4300万人ほどの患者さんがいると推計されています。しかし、その中で適切に血圧をコントロール出来ている患者さんは、4分の1程度の1200万人ほどと言われています。残りの3100万人のなかには、高血圧でも無症状の事が多いため、自分がそうなっている事も知らない人や、知っていながらも治療を受けず放置している人もいると思われます。
原因
高血圧の原因としては、体質など遺伝的素因、塩分の過剰摂取や肥満など様々な要因が組み合わさる事で起こります。特に、高血圧では家族性の要因が60%程あるといわれています。これには、家族として似た生活環境(食生活、食習慣や運動習慣など)にあるという環境的要因と遺伝的要因の両者の可能性が考えられます。そのため、家族に高血圧の人が多いなどの家族歴がある過程では、小さい頃から家族ぐるみで高血圧の発症を防いだり、機会をみて血圧を測るようにするなどの血圧の確認が重要です。
収縮期血圧(上の血圧)が基準より高く、拡張期血圧(下の血圧)が正常の場合、動脈硬化が考えられます。血圧は、血管の弾力性が関係しており、動脈硬化が進むと、収縮期血圧は高くなるが、拡張期血圧は低いままの状態になるとされています。
拡張期血圧(下の血圧)だけ高いのは、末梢の血管は硬くなっているのに、大血管の弾力性はまだ保たれている人、多くは若い方に見られることが多いです。生活習慣の乱れによりこのようなタイプの高血圧になる若い方も多いですが、女性ホルモンであるエストロゲンが少なくなる更年期の方もこのタイプになることがあります。なお、年齢を重ね全身の動脈硬化が進むにつれ大血管も硬くなります。その結果、収縮期血圧は徐々に高くなり、それにともない末梢に送り出す血液量も減るため逆に拡張期血圧は低くなっていきます。
症状
高血圧は別名サイレントキラーと言われる様に自覚症状などがほとんどの人でありません。しかし、治療をせずにそのまま放置しておくと動脈硬化が進行して脳卒中や心臓病、腎臓病など重大な病気になる危険性が高まります。年間に10万人以上もの人が、高血圧が原因で亡くなっていると言われます。夜間頻尿、呼吸困難、早朝時の頭痛、下肢冷感やふらつきなどの症状を認める際は、高血圧により合併症の可能性もあります。そのような場合は、そのまま放置せず、受診などを検討ください。
高血圧治療の目的は
高血圧治療の目的は、脳卒中や心筋梗塞などの病気を予防して、健康寿命を延ばす事です。健康な血管の壁は、弾力がありしなやかですが、血圧が高い状態が続くと、血管の壁が傷ついて厚くなり、固くなって弾力が失われた動脈硬化の状態になります。動脈硬化は、脳卒中や狭心症、心筋梗塞などの原因になります。高血圧は自覚症状がない事がほとんどのため、将来の脳卒中や寝たきり、認知症、狭心症、心筋梗塞などを予防するために、高血圧治療が非常に重要です。
治療
減塩、運動、禁煙などの生活習慣の修正が高血圧治療の基本となります。内服治療だけではなく、生活習慣の是正が有効です。具体的には、肥満の予防や改善、塩分摂取の制限、節酒に加えて運動習慣や食事パターンを見直す事が有効となります。生活習慣の是正に関しては、何か一つだけ集中して行うという事ではなく、いろいろ組み合わせて行う事で効果が出てきます。生活習慣病の6項目(減塩、脂質、減量、運動、節酒、禁煙)を見直すことが大切になります。薬を始めた後でも、このような生活習慣の改善は有効なため、しっかりと取り組むようにしてください。
生活習慣の修正
修正項目 | 具体的な内容 |
減塩 | 食塩摂取量 6g/日未満 |
肥満の予防や改善 | 体格指数(BMI) 25.0kg/m2未満 |
節酒 | エタノール量で男性20-3-mL/日以下 |
運動 | 毎日30分以上の軽強度の有酸素運動 |
食事パターン | 野菜や果物の積極的な摂取、コレステロールをさける |
禁煙 | 喫煙のほか受動喫煙も避ける |
その他 | 防寒、情動ストレスのコントロール |
・減塩
食塩の摂取量を減らすためには、料理の際に用いる調味料はもちろん、加工食品や外食の料理に含まれる塩分にも注意が必要です。
主な料理や食品に含まれる大まかな塩分量についてあらかじめ知っておくとよいでしょう。
・適正体重の維持
肥満の人が必ず高血圧になるわけではありませんが、肥満でない人に比べ高血圧の発症率は2-3倍高くなることが報告されています。BMI 25.0kg/m2未満、できれば22.0kg/m2を目安に減量しましょう。
・運動
体を動かす習慣をつけましょう。毎日30分以上を目標に、速度、軽いジョギングなど、軽-中等度の強度(自覚的には「ややきつい」程度の有酸素運動を行いましょう。)
・節酒
アルコールの作用はさまざまで、心臓のはたらきに影響を及ぼしたり、血管には作用したりすることで血圧にも影響を及ぼします。飲酒量や飲酒の頻度によってもそれらの作用は変わりますが、適量を守る事が大切です。
・禁煙
1本の紙巻きたばこを喫煙すると、血圧が15分以上持続して上がることがわかっています。喫煙により、心臓や血管の病気の危険性が高くなることが明らかになっており、禁煙と受動喫煙の防止に努めることが大切です。
また、血圧管理をする際に、受診時の血圧だけではなく家庭内での血圧をコントロールする事が重要となるので、家庭血圧の結果を血圧手帳に記録し、受診時にしっかり伝えるようにする事も重要です。